これほどに圧倒的な紅葉&黄葉の色彩は、いままで見たことがなかった。
それに夏と違って、すれちがう登山者もまばらで、
まるで2人のために輝いていたような槍沢カール。
……背中の重いザックも、しばし忘れる心地だった。
これほどに圧倒的な紅葉&黄葉の色彩は、いままで見たことがなかった。
それに夏と違って、すれちがう登山者もまばらで、
まるで2人のために輝いていたような槍沢カール。
……背中の重いザックも、しばし忘れる心地だった。
日頃の行いが悪かったのか、早朝4時20分、明るくなり始めた小屋の周囲は
濃いガスで何も見えなかった。……待ったが、あきらめて下山の準備をしながら、窓の外を見ると
ガスの切れ間から、残雪の峰々が見えだした。
「やったア、行くぞ、アタック!」
50分後、
私たちは強風の中、標高2956mの残雪の木曽駒ヶ岳の山頂に立っていた。
が、下山途中で、再び濃いガスと冷雨が容赦なく襲ってきた。
数えきれないほど、たくさんの日の出をみてきたけれど
やはり高山の、まったく音のない世界の中で、息を詰めながら見つめた地平線と
天空の色彩の変化していくさまは、……神々への合掌。
蝶が岳の山頂にあと少しというお花畑に、老人が1人うずくまっていた。
声をかけると、「胸のポケットからカプセルを出して、飲ませてくれ…」と死にそうな声でうめいた。
飲ませてしばらくすると、上半身を起こし
「名古屋から1人できたんだけど、…どーしても登るんだったらって、医者がクスリを持たせてくれて…」と言う。
小屋まで担いで行くか、従業員を呼んできましょうか?
と聞くと、「もう大丈夫だから、先に行ってくれ…」とニガ笑いで答えた。
私たちが小屋に着いてから、40分も過ぎたころ、その老人がようやくたどり着いた。で、すぐに売店に行き
ウイスキーの小瓶を買ってくると、コップを2つ出し、なみなみとついで
「ありがとう助かった、命の恩人と乾杯だ!」と差し出した。
こんどは、私が、ニガ笑いを浮かべてしまった…